"手のひらの京"を読んだ話

昨年秋頃に出た、綿矢りささんの「手のひらの京」を読みました。

作者の綿矢さん自身が京都出身ということもあり、おそらくは自然体な(と言っても広島弁も出てくるが)京都弁のセリフで話は進んでいきます。三姉妹それぞれの心理描写も京都弁。

久しぶりの長編

このブログにも感想を書きましたが、前作の"ウォーク・イン・クローゼット"は、「いなか、の、すとーかー」と「ウォーク・イン・クローゼット」の2作収録だったので、それ以前を振り返ると、"大地のゲーム"以来でしょうか。

個人的には長編のほうがなんとなく好きなので嬉しい限りですが、長編と感じさせないくらい、すらすらーっと読めてしまうのも綿矢作品のいいところ。

手のひらの京

簡単なあらすじを新潮社のサイトから引用します。

おっとりした長女・綾香は31歳、次第に結婚への焦りをつのらせる一方、恋愛体質の次女・羽依は職場で人気の上司と恋仲になり、大学院で研究に没頭する三女・凜はいずれ京都を出ようとひとり心に決めていた。
生まれ育った土地、家族への尽きせぬ思い。奥沢家三姉妹の日常に彩られた、京都の春夏秋冬があざやかに息づく、綿矢版『細雪』。

奥沢家三姉妹それぞれの視点が移り変わっていく形式で進む本書は、三人のそれぞれが主人公であり、それぞれが抱える悩みや想いが、"京都"という“守られている感じ”の土地を舞台に展開されていきます。

長女・綾香

"おっとりした長女"という描かれ方をしている綾香は、図書館で働き、着物の着付けが趣味。

これまでひっそりと募らせていた結婚願望(と焦り)を、次女の羽衣の職場の同僚である宮尾さんと出会い、大人らしく慎重に爆発(?)させていきます。その恋路や如何に...

次女・羽衣

長女のおっとりさとは正反対に、普段から恋路にひた走る次女。入社した会社で、人気の上司である前原と付き合うものの、周囲の女性社員から圧力を受けるように。

そんな中、羽衣はとうとう女性社員(先輩)に啖呵を切ることになり...

三女・凛

個人的には本作の主人公を強いて挙げれば三女の凛になるのかな、といったところ。

大学院生として研究室生活を送る一方、教授に口利きしてもらった大手メーカーへの就職をして東京で働きたいと願う凛。京都で生まれ育った両親にそれを反対され...

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イラストレーターの山本由実さんによる装幀がいかにも京都の雰囲気を感じさせます。

「なんて小さな都だろう。私はここが好きだけど、いつか旅立つときが来る——。」