綿矢りささんの2年ぶりの新刊「ウォーク・イン・クローゼット」を読みました。
本書には「いなか、の、すとーかー」と「ウォーク・イン・クローゼット」の2作が収録されています。僕が最も好きな作家さんなので、本屋で見つけていつも通りの即買いです。
いなか、の、すとーかー
まずは簡単なあらすじを講談社のサイトより引用させていただきます。
陶芸家デビューからわずか3年、石居は、テレビで特集が組まれるほどの人気の売れっ子。
東京の美大卒業後、郷里に戻り、工房をかまえ、絵になるロハスな陶芸家生活を送っている。しかし、以前から彼を追う女ストーカー・砂原が工房に現れるようになり、事態はどんどん不穏さを増していき…。
世の中的に、ストーカー行為と言えば男性が女性に対して、というのが一般的な印象だけど、考えてみれば女性が男性に、という逆パターンも発生しうるわけです。既に逆パターンと言ってるけれど。
作中に登場するのは主人公の石居(陶芸家)と、女ストーカーの砂原(砂かけババア)、郷里の幼なじみであるすうすけ(男)と果穂(女)の主に4人。
一人称が「おれ」という男性が主人公の作品
どちらかと言うと綿矢さん作品には珍しい(と思う)、男性が主人公の作品で、物語は彼の視点で進んでいきます。
僕が綿矢さん作品を好きな理由のひとつに「女性目線の描写」があるわけだけど、主人公が男性だからそれは感じられないかと思いきや、女ストーカーとなった女性の描写に表れていました。
主人公の目線だから「ああ、もう!」と感じるのだけど、物語の進み方や終結の仕方から、(当人が)予想していない物事の受け止められ方ってあるんだな、と。
ウォーク・イン・クローゼット
こちらも同じく、あらすじを講談社のサイトより引用させていただきます。
主人公・早希は、28歳、彼氏なしのOL。売り出し中のタレントだりあは幼なじみ。
だりあのマンションには、撮影で着て買い取った服がぎっしりの、早希には夢のようなウォーク・イン・クローゼットの部屋があるのだ。そんなふたりの友情のゆくえは…?
こちらは女性が主人公の作品。
"いなか、の、すとーかー"とは正反対に、今度はストーカーまではいかないものの、酷い男達が登場します。そして、それを辛口に表現する主人公の女性の描写があまりにも綿矢作品の王道!って感じで好き。
普通のOLとなった早希と、売り出し中タレントのだりあの関係とかやり取りとか、どこかで壊れるんじゃないか...!?と危惧してしまうようなそんな心地を感じます。(どうなるかは読んでみてください)
「夢を与える」「かわいそうだね?」
華々しい芸能界という表舞台と、そこから転落する人生を綴った「夢を与える」や、平凡なOLを主人公とした「かわいそうだね?」を彷彿とさせる作品だな、と。
もちろん、主人公が表舞台に立つ人間というわけではないし、三角関係を描いているわけでもないので、その両作品とも違うのだけど。
「私たちは服で武装して、欲しいものを掴みとろうとしている」
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