あまりに衝撃的なタイトルの書籍。
そもそも僕自身は「コンサルタント」と呼ばれる人々と直接的に仕事をしたこともなければ、実際に会ったことすら(話したことすら)ないと思うのだけど、だからこそコンサルタントという職業に疑念を抱く。
正直、会社の外から助言だの提言だのっておいおい...って思わざるを得なかったし、何よりそこまで会社を成功させられるご自慢の理論をお持ちならご自分で立ちあげて大成功を収めてはいかが?とか思っちゃう。
というわけで、このレビューは「コンサルについて何も知らない若輩者が、先入観のある立ち位置で読んだ」という背景を加味して読んでいただければ幸い。何も嫌なコンサルさんがいたとかじゃなくてね笑
この本を手にとった経緯として
始まりは「コンサルって何だ。実際のところどうなんだろう?」という純粋な疑問からでした。先述の通り、仕事で関わったことはなかったし、実際にお会いしたこともなかったので。
あと「コンサルタントってどうなんですか?」って誰かに聞いてもその仕事ぶりとか有能さとかはあまり伝わってこなくて。...まあ身を置いてる業界や職種によるのかもしれないですが。
そんなわけで、Twitterで以下のようにつぶやいたところ、それに反応してくれた方が今回の衝撃的表題の書籍を紹介してくれたというわけです。
そもそもコンサルタントを賞賛する本ではない
数多くある(と思われる)ビジネス書としてのコンサルティング系の書籍は、おそらく多くの場合はコンサルティングに対する賞賛とか、コンサルティングを成功させるコツみたいなことが連ねてあるのだと思ってる。
けど、この本はそもそもがコンサルを賞賛するものではなく、むしろ正反対からあれはだめ、これはだめ、と否定していく。冒頭の一文が「申し訳なかった。」で始まるほど。
内容は、どこかで聞いたことがあるような・ないような、そんなコンサル用語やツールに関して、それぞれの理論や背景、現場、経験、問題等々について章立てで解説する流れになっているから、たぶん読み返しやすい。
- 「戦略計画」
- 「最適化プロセス」
- 「数値目標」
- 「業績管理システム」
- 「マネジメントモデル」
- 「人材開発プログラム」
- 「リーダーシップ開発」
- 「ベストプラクティス」
今回は、本書を読み進めた時に気になった部分や印象に残った部分をいくつかメモしていたので、それをピックアップしていきたいと思う。
対処方法や手順を示すことと、失敗例や問題点を示すことのちがいは、前者は読者の考え方を狭めるのに対し、後者は考え方を広げる点にある。
(第2章「最適化プロセス」は机上の空論 / 92ページ)
一見、前者のほうが効率的な印象を受けるけど、長い目で見るとそうではない。多くのビジネス書が最終章で「有効な解決策の正しい実施手順」を示す一方で、著者はコツや手順を示すだけでなく、失敗例に触れることを良しとしている。
正解を教えてもらえれば大抵の人はうまく事を運ぶことができる。しかし、それでは自分自身の考え方が「正解」に制限されてしまい、何か予期せぬことが起きた場合に、臨機応変な対処を行えなくなってしまう。といったところかな。
多大な時間とカネと労力を費やして、職務等級のレベル感を統一し、パフォーマンス基準や必要とされるコンピテンシーを設定し、評価スケールやボーナス目標や給与目標を取り決め、所定の書式とプロセスを設けて自動化し、必要事項を記入したら、それをもとに会議で全体のすり合わせを行って社員を通常の分布曲線に当てはめ、評価スコアをめぐって議論し、評価スコアに応じて報酬を分配し、社員と面談を行って各自の長所と短所について話し合い、総合評価と報酬を通知という一連のプロセスは、社員のモチベーションにも会社の業績にも、有害な影響をもたらしている。
(第4章「業績管理システム」で士気はガタ落ち / 164ページ)
なんとも長い一文だけど、ひとつひとつを読み取っていくと「ふむふむ...」「ほうほう...」「なるほど...」......で、有害な影響をもたらしている。
このあたりの評価方法に関しては僕は全くの素人だから何を「最適」と考えるかといった知識はないけれど、大きな組織になればなるほど、こういったレベル感の統一や所定の書式やプロセスって存在するんじゃないかなー、って。
スターはダメな部分も「魅力」に見えてしまう。 ---略--- ミーティングに報告書を持っていくのを忘れても、「やっぱりクリエイティブな人はちがうなあ」などと許されてしまう。「ダメなやつ」が同じことをしたら、「だからダメなんだよ」と文句を言われるに決まっているのに......。
(第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな / 219ページ)
確かに、同じことを同じやり方で進めて、同じ結果を得たとしても、誰かそれをやったかによって評価は異なる。無論、部長クラスの人が新卒クラスの人と同じフロー・結果を得たのでは評価は異なって然るべきだけど笑
ここでは、いわゆるレッテルについて言及している。一度の失敗が「致命的」になってしまうシステムであり、なかなか剥がすことのできないシステム。そして、そのレッテルにより判断や記憶が歪曲されてしまう時、ラベリング効果が起こる。
私の経験から言っても、ビジネス上の問題の多くはコミュニケーション不足によるものであり、コンサルタントとしての私の真価は、異なる部門や階層をつなぐコミュニケーションの橋渡しとなることで発揮されることが多い。企業にとってはえらくカネのかかるコミュニケーション方法ではあるが。
(第8章 「ベストプラクティス」は”奇跡”のダイエット食品 / 282ページ)
結局のところ、すべての企業に対するベストプラクティスなど存在しなくて(わかっていたけど)、コミュニケーション能力という一見当たり前なものがその基盤として不可欠。
仕事をしていく上のみならず、就職活動などにおいてもコミュニケーション能力というのは欠かせないものだと言われがちだけど、それゆえにそれが企業内で欠如していることは致命的なのだろう。だからこそ、部門間の橋渡しとなるコンサルタントは有用なのかもしれない。
ベストプラクティスはないというベストプラクティス
なんだかそれらしいまとめの見出しになってはいるけど、この本によってコンサルタントの仕事がより深く理解できた、というわけではない。なにせ、冒頭にも書いたようにこれはコンサルタントを賞賛する本ではないので。
筆者の経験を基に、成功例や失敗例、そこから学べるベタープラクティスやバッドプラクティスをあらゆるコンサル用語やツールに絡めて紹介している。ちなみに、これによってコンサルの印象が悪くなるってこともないのでご安心を笑
いずれにせよ、コンサルティング業界の「へぇ」が詰まった本であり、コンサルタントに期待すること・してはいけないこと(コンサルを悪く言うのではなく、その企業の人がやるべきこと)は第一歩目として理解できたかな。
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