三部作の完結本(らしい)、「とにかく仕組み化」を読了しました。
安藤広大さんの著書、最初は妻から「リーダーの仮面」という本をもらって読んだのだけど、なかなか刺激的でおもしろくて、その後に出た二作目、三作目(本著)も購入して読みました。
前二作の感想など
下記のエントリーで自分のためのメモがてら感想を書き殴っています。
「リーダーの仮面」はそのタイトルの通り、リーダーやマネージャー向けに書かれた本(特に管理職一年目とか)で、「数値化の鬼」はプレーヤー向け。そして本著はリーダーやマネージャーとしてさらに上を目指す人向け、という感じです。
本著の目次
読み直し時のため、出版社のサイトから引用で目次を載せておきます。ただし、各章の下の見出しのさらに下は割愛します(長くなりすぎるので)。
はじめに 人の上に立ち続けるための思考法
序章 なぜ「とにかく仕組み化」なのか
- 「個人」を責めるな、「仕組み」を責めよう
- 「仕組み化がないチーム」のたった1つの特徴
- 「属人化」ほど怖いものはない
- 「とにかく仕組み化」のための5つの考え方
- 序章の復習 とにかく「仕組み」へと頭を切り替える質問
第1章 正しく線を引く ──「責任と権限」
- 「自分で決めること」をやめた人たち
- 「線を引く」をやる。線は書き換えていい
- 仕組みに立ち返れば、どんどん「新しいこと」ができる
- 「責任」によって、人はリーダーになっていく
- 「能力」よりも「機会」が先にある
- 1章の復習 「責任と権限」を手に入れるための質問
第2章 本当の意味での怖い人 ──「危機感」
- 「ついていきたい人」の本質とは何か
- 間違った「怖さ」と間違った「優しさ」
- 「危機感」を生み出す仕組みをつくる
- 「ゆるさ」は新しいブラック企業だ
- 「危機感」の先に待っているもの
- 2章の復習 「危機感」をうまく利用するための質問
第3章 負けを認められること ──「比較と平等」
- どうせ、みんな「心の中」で比較し合っている
- 「全体の利益」を優先させることの意味
- 「差があること」はメリットでしかない
- 「降格の人事」が本当に求めていること
- 「平等」を維持するための仕組みをつくる
- 3章の復習 「比較と平等」に気をつけるための質問
第4章 神の見えざる手 ──「企業理念」
- 「どこに向かっているか」を押さえておく
- 目標を掲げることの「恥ずかしさ」
- 「神の見えざる手」で働いている
- 自分の会社の「企業理念」を言えるか
- 「理念なき会社」とはどんな存在なのか
- 「成し遂げたい思い」は仕組み化できない
- 4章の復習 「企業理念」を再認識するための質問
第5章 より大きなことを成す ──「進行感」
- 先に「企業理念」の話をしなかった理由
- 「会社が変わる」とはどういうことを指すのか
- 「個人の時代」へのアンチテーゼ
- 「進行感」という感覚を持ってみる
- 「ここに残りたい」と思われる会社にするしかない
- 5章の復習 「進行感」を浸透させるための質問
終章 「仕組み化」のない別世界
「人間に戻れる場所」を持てばいい
「属人化」の犠牲者を生まないために
「かけがえのない歯車」になる、あなたへ
どうか「頼られる存在」になってください
おわりに
章ごとに印象に残った部分まとめ
前回同様、初読時に気になったり、印象的だったページや行に付箋を付けているので、それを並べて振り返ってみたいと思います。
はじめに
過去に作られて形骸化したルールを、もっと大きな仕組みの枠組みによってアップデートしていく。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.19
「仕組み化」は自動化のことではなく、「ルールを決めて、ちゃんと運営する」ということ。でも、何のためのルールかわからないルール(過去に作られたルールとか)はそれだけが形骸化し、その「責任」を語れる人がいない状態は、人の上に立つ人がその責任において変えるべきである、と。
確かに過去のルール、その時は意味があったものでももはや、というのはあるあるかもしれない。理不尽なルールになる前にアップデートしなければ。
序章 なぜ「とにかく仕組み化」なのか
そうやって、締切が絶対であることを徹底します。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.54
「仕組み化」の大前提にあるものを序章では説明されていて、それは「期限を守ること」。それが最低限できていないと「仕組み化」は機能しない。そのためには「締切(期限)が絶対であることを徹底し、間に合わない場合は事前に部下のほうからコミュニケーションを取らせること。
そういえば類似したことは、前作でも書かれていた気がする。「リーダーの仮面」だったかな・・・。期限というよりルール、というより広範囲な言い方だったかもしれないけど。
「性弱説を前提に考えたほうがいい」
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.66
「組織は放っておくと属人化していく」
人はラクをして生きるものであり(性弱説)、仕組み化の反対は属人化である。
第1章 正しく線を引く ──「責任と権限」
これは、「文章として明確に鳴っていない曖昧な権利」のことを指します。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.81
よく、「既得権益」という言葉が使われます。
権利には二種類、「いい権利」と「悪い権利」がある。いい権利である条件は、権利の範囲が文章として明確になっているかどうか。悪い権利とは、実際は権利なんて持っていない陰の実力者がいたり、「見えない決まりごと」があったりすること。そして、それを既得権益と称する。
すべての権利、権限を明文化することはとても難しいような気もするけど、確かに「陰の実力者」のように、あの人には話を通さなければ、みたいなのは排除すべきだと思う。権限と責任は常に表裏一体、セットでなければ。
それが責任を果たすということです。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.87
その負担に対して、マネージャーやリーダーとしての給料が支払われているのを自覚しないといけないのです。
意思決定における線引きははっきりとする。ルールを守っていない人にはちゃんと指摘をし、新しく入ったメンバーにもそれを周知・徹底させる。言った・言わないをなくす。
そういった「意思決定」にかかる負担や責任に、管理職の給料が支払われている、と。まあ実際には肩書きに対するプラスの給料はないというところもあると思うけども。
優秀さとは、その組織に入ることで、いかに適応し、成長するかです。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.108
「仕組み」によって組織に合わせていく能力です。
この辺から安藤広大さんらしい感じがガンガン出てきているなあと思いますが、本著では「組織人であること」がかなり強調されます。どこかの章では「社会、会社の歯車」という、敬遠されそうな言い方を肯定するし(いや、理論はわかるのだけど)、歯車になることの重要性も語られます。
と思ったら御本人がnoteにも書いていました。
言い換えると、どこかの組織の歯車としてやっていける人は「仕組み」に順応できる人であり、それは他業界や他の職種にいっても変わらず発揮できる能力である=優秀、といった感じかな。
第2章 本当の意味での怖い人 ──「危機感」
なぜなら、指摘されたことで「何を改善すればいいか」がわからないからです。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.127
「それを言われて、次はどうすればいいのだろう・・・」
と、部下を迷わせるような指導は、何の意味も持ちません。
ここで語られているのとは違ったベクトルで耳が痛いというか。ここでは「必要な恐怖」という題目で語られているものだけど、確かに部下に対するFB、指摘は適切・的確だろうか、って悩ましい。同じ人間なのだから「おおー!そうかああああ!!」って目から鱗になるような革新的なFB、指摘ばかりはできないよな、とも思う。
それなら「このままではまずい」と相手に思わせるような「恐怖」を持ち合わせ、相手に考えさせる、ほうがよさそう。「次はこうしたらいいよ」ではなく。
人の上に立つ人は、「距離感を保つ」「制限時間をつくる」という仕組みを実践してみてください。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.135
実際にやってみると、部下が自分で考えて結果を出すようになります。
ひとつ前に書いた感想と合致する部分でもあるけど、懇切丁寧に指導をする(新卒入社とかならまだしも)のではなく、一定の距離感を保ち、時間制限を設けることで「緊張感」を維持する。それにより、自走できるメンバー、組織を育成していく。そういう理解。
第3章 負けを認められること ──「比較と平等」
いかなるときも、「成長したい人」を基準に判断しましょう。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.161
「成長する機会」を奪わないことです。
もう「はい。」というだけなのだけど、人が自分以外の誰かと比べるのはごくごく自然なことなので、それを隠すような忖度はしないこと。がんばっている人ががんばらなくなるような環境ではなく、常に競争環境を整えるようにすること。(前章までの「責任と権限」「危機感」をベースに)
「モチベーション管理」をしないということです。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.188
自分からできるモチベーション管理なんてたかが知れているけれど(実際に身銭を切るわけにはいかないし、かといって給与アップを約束することもできないし。)、それでもやる気を出させてあげるようなことをしないことが重要。
仕事をさせることは罰ではないのだからそこにさらなるご褒美を与える必要はない、と。(仕事に対する対価は給与という形で既に約束(労使契約)されているのだから、という意味合いもありそう)
第4章 神の見えざる手 ──「企業理念」
そんなに不満があるなら、早く成長して人の上に立ち、自らの責任において「仕組み」を変えればいいのです。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.208
踊る大捜査線の室井管理官を思い出したけど、現場から見て、上に不満があるなら自分が上にいって変えるしかない、みたいな感じ。あ、でもこの引用文については僕自身が共感したから選んだけど、本著では企業理念、すなわち「目標を掲げることの恥ずかしさ」の補足説明として出ています。
意思決定は、上から下におこなわれます。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.228
ただし、下から上に情報をあげることは正しい。
マネジメントの真理らしい。トップダウンは悪だ!と言われることがあるし、トップダウン or ボトムアップ、のような質問も度々あるけど、結局は両方の側面があり、常に表裏一体。
ただ、ボトムアップで集まった情報の「意思決定」は常に上の人が行い、その決定は絶対。なぜなら責任を負っているから。責任を負ってない人による決定や判断は物理的にできないのだそう。(陰の実力者の温床でもありそう)
第5章 より大きなことを成す ──「進行感」
それは、「情がわくことによって対立を生む」ということです。
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.250
自分の仕事を守ることが最優先になり、会社の意思決定に不満を抱いてしまいがちになります。
長く同じところにいることのデメリットとして挙げられていることだけど、身に沁みてわかるというか、実感すらあります。「自分の仕事を守る」というよりかは「愛着」に近い感覚だけど、結局は変化への畏れであるとか、立場の揺らぎに対する畏れなのかもしれないな、と。。
・どの方向に成長したいか?
安藤広大著「とにかく仕組み化」P.269
・どうやって世の中に貢献したいか?
これはメンバーのキャリア形成、目標設定や1on1とかでも使えそうなフレーズだな、と率直に。そんな「世の中に貢献」とか壮大なこと考えてません、みたいな感じも正直あるけど、結局会社や組織って何のためにあるんだっけ?を考えればある意味自然な発想かもしれない。
とはいえ、そんな毎回こんな壮大な話をしても・・・はそうなので、タイミングとか頻度は要検討。ただ、目標設定とか振り返りの時の土台(ベース)にはあるべきだからそこの軸にはしたほうがよさそう。
読了後の感想
今回は読み始めてから数日で読了しました。
内容的には三部作の中では最も個人的に納得感の強いものだったかな、と思います。「リーダーの仮面」はなかなか冷徹な感じもあったし、「数値化の鬼」は数値化が難しい(データの取得への手間とか)場面もあるよな、と現実と照合した場合の若干のズレがあったから。
でも三部作通して、「いやー、そうあるべきだよね。」ではあると思ってます。リーダーとして仮面をかぶるが如く役割に徹して全うすべきだし、数値化の鬼として感覚ではなくデータ、数字で語り尽くさねばならない、とも思います。
なので、ここまでの3-4年間のマネージャー生活を振り返って、我流にちょっとスパイスを加えるように、この三部作「リーダーの仮面」「数値化の鬼」「とにかく仕組み化」を部分的にでも取り入れていってみたい。
と、まあ「取り入れていきたいです!」といった心酔レベルではなく、理想と現実は違うだろうから、取り入れた結果、また新たな化学反応というか、現場での反応があれば、そこに対応して適応していけばいいかな、と。