"リーダーの仮面 -「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法-"を読んだ話

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。


夏休みにマネジメントや1on1に関する書籍をいくつか読んだけど、今回はそれらに関連しつつも、1on1を真っ向から否定するような、そんな書籍を読んだ。

著者は、株式会社識学の安藤広大氏。今回も自分の備忘メモ代わりに感想などを書いてみる。

本書ではそのタイトルにもある通り、一貫して「リーダーの仮面をかぶれ」ということが主張されている。リーダーの仮面とは?どうやってかぶればいいのか?かぶったら何が嬉しいのか?

個人的な感情を横に置く

一見、非人道的な言い方にも見えるし、実際僕もそう思ったし、なんなら読了した今でも思っている笑

まあそれについては本書内でも触れられていて、「いやいや、そのマネジメントで失敗して成果が出ず、会社が潰れて雇用が維持できなくなったらそれこそ非人道的やん?」といった具合。

5つのポイント

本書の第1章〜第5章は次の5つのポイントと対応している。

ポイント1「ルール」 - 場の空気ではなく、言語化されたルールをつくる
ポイント2「位置」 - 対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする
ポイント3「利益」 - 人間的な魅力ではなく、利益の有無で人を動かす
ポイント4「結果」 - プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る
ポイント5「成長」 - 目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ

安藤広大著「リーダーの仮面」P.46

この5つの補足として「会社は孤独を埋める場所ではない」とある。そういえばマネージャーになったばかりの頃、当時の部長(役員でもある)から「マネージャーは孤独だよ」って言われたことを思い出した。

また、序章の実践パートとして、5つの質問が投げかけられている。なるほど、いまの僕は多くに当てはまっていそうだ笑

ルールについての考え方

直感的にネガティブに聴こえる「ルール」というワードだけど、「自由にしていい」は逆にストレスになる。守る側にとっても適切なルールはあるほうが動きやすい。

たしかに仕事上、「いい感じにして」というのは「は?」ってなるし、そこに共通の物差しは存在しないから結果的に「いい感じにした"つもり”」で提出すると、あれこれ言われることはある。。

「ルールを決める」ことはリーダーの仕事の中でも特に大事。ただ、注意点がある。

  • ルールを守る・守らせるときに個人的な感情を加えてはいけない
    • あの人は目標を達成しているから遅刻してもいい
    • 出世したから挨拶しなくてもいい
    • あいつは気に食わないから厳しく注意してもいい
    • 中途入社だから前職のやり方でもいい
  • 空気の読み合いにならないようにする
    • 「自由にしていい」と言われたから自由にしたのに注意される、など、リーダーの顔色をうかがったり、空気を読んで行動しないといけないようなものはダメ

姿勢のルールは「誰でも守れる」が絶対条件

ルールには「行動のルール」「姿勢のルール」があり、姿勢のルールとは「できる・できない」が存在しないルールのこと。(行動のほうは後半の章にて解説。)

  • 挨拶をする
  • 会議には遅れずに参加する
  • 日報を17時までに提出する

やろうと思えば誰でも守れる、というのが特徴で、逆に言うと守らない人は「意図的に守っていない」ということになる。(忘れる、も含めてかな・・・)

また、新しいことをすると必ず反発があるが、これは序章でも述べられている「感情を横に置くリーダーの仮面をかぶれ」とのこと。ルールはルールだから、と。

部下に好かれようと(感情で)行動することはNG。上司は上司の役割、部下は部下の役割を、ルールに則って規則正しく動くのみ。感情は抑えて、とにかくルールを守らせることに集中する。

部下にルールを守らせる上でのポイント

この2つを満たしていないルールはすべて「ダメなルール」。

  1. 主語を曖昧にしない
    • 「早くやらないと上が怒るよ」、これはリーダーである自分が部下と同じ位置からモノを言っていて、責任逃れである。部下からすると同じ位置に降りてきてくれているので怖さがなくなり、成長しなくなる。
  2. 誰が何をいつまでにやるかを明確にする
    • 「オフィスはキレイにすべき。気づいた人が率先して掃除しよう」、このような標語的なルールはNG。ルールのある組織に「気遣いでやる仕事」という概念はない。

自分の「位置」

ピラミッド組織において、リーダーは自分の役割を理解し、決めることに躊躇をなくさないといけない。自分がピラミッドのどの「位置」にいるかを把握し、下からの情報を判断し、意思決定する範囲を知るべし。

リーダーは視点を「未来」に向けて、今の利益<未来の利益を選ぶ。

「お願い」ではなく「言い切り」で任せる

位置を明確にしたコミュニケーションを部下全員にできているかどうか。以下は「位置」を間違えた言い方であり、平等と対等を混同している。

  • 時間があるときでいいので、資料をまとめておいてくれない?
    • 間違いの理由)決定権が部下にある
  • やりたくなかったら断っていいんだけど、これできる?
    • 間違いの理由)責任の所在を曖昧にしている

「あれって、どうなった?」を言わない

部下に指示するときには必ず「締め切り」を設定する。指示は「上から下」で、その後の報告は必ず「下から上」になるようにすべき。

正しいほうれんそうをさせる

ほうれんそうに対し、感情が絡んだ「見えないハードル」をなくすため、その場で褒めたり叱ったりせず、「機械的に事実だけを聞く」という態度が必要。

上司から部下に確認するような状況もNG。部下に寄り添うことは、成長の止まっている状態を正当化してしまうことになる。部下への確認はあくまで「情報を吸い上げる」ときだけ。(1on1に対して否定的)

また、上司が「相談」に乗っていいことは次の2つ。

1つめは、「部下の権限では決められないこと」を決めるとき。
2つめは、「部下が自分で決めていい範囲なのかどうか」を迷ったときです。

安藤広大著「リーダーの仮面」P.126

明らかに部下の権限で決めることができる内容は相談に乗ってはいけない。「あなたが決めることだから、あなたが一番いいと思う提案をして」と突き返す。


と、ここまで書いてきて、だいぶ疲れたのでこれ以降はやめます笑

同書の書評ブログ

(僕もこんな風にまとめられるようになりたい)

第3章以降の目次

僕が書いたのは主に序章〜第2章までの内容なので、それ以降は再読時に掘り出しやすいように目次を載せることにする。

第3章 大きなマンモスを狩りに行かせる -「利益」の思考法

  • 部下の「タテマエ」を本気にするな
  • どこまで行っても「組織あっての個人」
  • 「集団の利益」から「個人の利益」が生まれる
  • リーダーは「恐怖」の感情を逆に利用する
  • 事実だけを拾い、「言い訳の余地」をなくしていく
  • 健全なる「競争状態」をつくる 
  • 実践 「言い訳スルー」をやってみる

第4章 褒められて伸びるタイプを生み出すな -「結果」の思考法

  • 他者の「評価」からは誰も逃げられない
  • リーダーは「プロセス」を評価してはいけない
  • 「いい返事」に惑わされるな
  • リーダーがやるべき「点と点」の管理術
  • 「結果」を元に次の目標を詰める
  • 実践 「点と点の目標設定」をやってみる

第5章 先頭の鳥が群れを引っ張っていく -「成長」の思考法

  • 「不足を埋める」から成長が生まれる
  • チームが成長するとき、必ず起きていること
  • 「変わった気になる」を徹底的になくしていく
  • 実践 「とにかく一度行動させる」をやってみる

終章 リーダーの素顔

  • もっとも「人間」を追求したマネジメント
  • リーダーは「逃げ切ろう」とするな

読了後の感想

「リーダーの仮面をかぶる」という表現は比喩とのことだけど、その中で実践することには賛否あるだろうなあ、と思った。

理想的?

目標を設定して、未達なら次の行動策や改善策を考えさせる、といったことは以前読んだマネジメント本にも似たようなことが書いてあったし、それが理想的という認識は少なからずある。

リーダーやマネージャーたるもの、今の利益よりも未来の利益、すなわち成長を優先するというのも理解に難くない。

本書ではさらに、感情を横に置いて、ルールを守らせ、事実だけを見て評価する。プロセスの評価はせずに結果だけを見る、とある。ここがなかなか難しそうな部分だな、というのが率直な感想。

現実には?

識学というこの手法がうまくいくケースも確かにあるとは思う。一方で、いくらルールだ、役割だ、と言っても、それを遵守・遂行するのは生身の人間であり、仕事には妥協しなければならない瞬間が存在する。

例えば、エンジニアが休日の監視当番(勤務ではなく緊急時の当番)を交代制で決めたとする。勤務ではないから100%即時対応ができるとは限らない。

それに対して「あなたは当番なんだから100%即時応答して対応せよ」というのは些か強引すぎないだろうか。かといって、有事が発生する確率から言えば、張り付けの監視勤務にするのはコストが見合わない。

・・・当番を増やすなり、当番のやるべき初動を明確にするなり、当番すら要らないような仕組みを作るなり、解決策はいくらでもありそうだが、どうしてもそこには「誰かが」というある種のボランティア精神や気遣いが生まれてしまう。

とはいえ

その精神に甘えてしまっては「やったもの損」になるのは自明であり、それこそ「プロセスを評価してあげないと」というループに陥るだろう。(当番じゃないときの対応をがんばってくれてるから、みたいな)

もちろん、当番じゃないときの対応(その結果)を評価する仕組みも必要かもしれないが、それよりもまず整備すべきは当番が当番として評価されうる構造。会社の利益を個人の利益に結びつけるための構造かもしれない。

実践できるかどうか

100%実践できるかどうかは会社の方針ともすり合わせが必要かな、と思ったけど、各章で述べられている下記の項目については一考してみたいと思う。

  • 「姿勢のルール設定」【ルール】
  • 「お願い」ではなく「言い切り」で任せる【位置】
  • 事実だけを拾い、「言い訳の余地」をなくしていく【利益】
  • 「結果」を元に次の目標を詰める【結果】
  • 「とにかく一度行動させる」【成長】

以下、2020年夏に読んだマネジメント関連書籍